現行の「家族関係の登録等に関する法律」(가족관계의 등록 등에 관한 법률)では、「登録事項別証明書」(基本証明書・婚姻関係証明書・家族関係証明書)や従前戸籍制度に基づく「除籍謄本」に関する交付請求権者について、第14条第1項で以下の通り規定しています。

第14条(証明書の交付等)

① 本人又は配偶者、直系血族、兄弟姉妹(以下、本条においては“本人等”と言う)は、第15条に規定された登録簿等の記録事項に関して発給可能な証明書の交付を請求することができ、本人等の代理人が請求する場合には本人等の委任を受けなければならない。(※以下、「但書」の部分は省略します。)

つまり、これまでは、証明書の対象者である「本人」以外にも、

★配偶者
★直系血族
★兄弟姉妹
の関係にある親族ならば、直接(本人からの委任なしで)「本人」の証明書の交付請求を行うことができました。

しかしながら、今後は上記の取扱いに大きな変更が生じることになりました。

上記の規定、すなわち「家族関係の登録等に関する法律」(가족관계의 등록 등에 관한 법률)第14条第1項「憲法に違反している」として憲法裁判所あて提起されていた「憲法訴願事件」(2015헌마924)に関して、2016年6月30日、裁判官の意見(違憲6対合憲3)により「違憲」との決定がなされました。

具体的には、「本人等」の範囲に「兄弟姉妹」まで含めるのは「個人情報自己決定権を侵害するものである」との理由から、「兄弟姉妹」については証明書の交付請求権者から除外すべきであるとの趣旨の決定がなされたものです。

この決定により、現行の規定のうち、
★兄弟姉妹に交付請求権を認めるという部分が効力を喪失することとなりました。

上記決定に基づき、日本駐在の各韓国総領事館においても、翌2016年7月1日から、兄弟姉妹が他の兄弟姉妹の基本証明書・家族関係証明書・婚姻関係証明書等を直接(委任なしで)請求することを認めないという措置を取っています。
※なお、本人の「委任を受けて」いれば兄弟姉妹が他の兄弟姉妹の証明書を「代理人」として交付請求することは可能です。

遠くない将来、上記決定に基づき法改正が実施され、「家族関係の登録等に関する法律」(가족관계의 등록 등에 관한 법률)第14条第1項の規定自体が変更されることは明らかですが、既に憲法裁判所の上記決定は発効している状況ですので、今後の証明書等の交付請求にあたってはくれぐれもご留意ください。

なお、今回の憲法裁判所の上記決定に伴い、今後問題になりそうな点として見込まれるのは、

★相続事件において法定相続人が「兄弟姉妹」のみである

場合です。
委任を受けるべき「本人」、すなわち「被相続人」は既に他界している状況ですので「本人」から委任を受けることは不可能です。

こうしたケースについて今後どのような取扱いがなされるのか・・・

韓国の当局(大法院等)において検討がなされ、関連の「家族関係登録例規」等が順次整備されていくものとは思われますが、当面は混乱も予想されるところです。

今後、上記のような事例に遭遇した際には韓国総領事館に個別に相談してみる必要がありそうです。